立ち上がる度、強くなる
2019年08月11日(日)
ガガガガガ…
今日も隣の家の工事の音で目を覚ます。
「日曜やのに今日も工事やってんのかいな…頑張るなぁ…」
時計を見ると11時。
絶賛お盆休み満喫中の今だからこそできる、この時間での起床。
この贅沢な気分を味わいたいからか、
まだまだ寝たい気もする…
しかし、空腹には勝てず、リビングへ…
「なんか食べるもんあったかな~」
と台所を物色。
レトルトカレーを見つけ、速攻でレンチン。
昼飯を平らげたあと、読書しながら、
今日をどう過ごすか考える。
「今日も今までの自分が、しなさそうなこと、何かしたいなぁ。」
「そうや、1人暮らしするなら、料理出来た方がいいって言うてはったな…」
この前、通ってる職業訓練で色んな人から聞いたアドバイスを思い出す。
「よし!今日の晩御飯は自分で作ってみよう!」
というものの自分1人では何していいか分からず、とりあえず母を頼ることに。
「今日の晩御飯、自分で作りたいんやけど、手伝ってくれへん?」と聞くと、
「ええで~」と即答で帰ってきた。
何作るか~と母と相談し、牛肉が余っていたので、とりあえず牛丼を作ることに。
「牛丼とか簡単やし、すぐできるわ!」と母が言う。
「ほーん」と何もわからない僕は、とりあえず返事だけしておいた。
18時ぐらいになり、料理開始。
まず玉ねぎ切って、炒めて、牛肉も混ぜて、炒めて、
その上に水、醤油、みりん、酒、ホンダシ、砂糖を入れたら、直ぐできた。
「案外簡単なんやな~」
って僕が言うと、
「まぁ料理なんてそんなもんやで。後はやるかやらんかやな」
と母は言う。
皿にご飯を盛り、炒めた牛肉と玉ねぎを上からかけて完成。
「おおー!料理したー!」
俺もやればできる!そんな気がした。
自分で作った牛丼をさっそく口に頬張る。
味見の時は気づかなかったが、砂糖が多かったのか、少し甘めだった。
でも甘党な自分には満足いく出来だった。
「おー!おいしい!」
直ぐに牛丼を平らげた。
食器を洗い終わった後、母に自分の考えを話してみた。
「なぁなぁ、俺な1人暮らししようとおもってんやけどな、」
「ふーん、何処で?」
「東京か、大阪で考え…」
「東京にしとき!!」
「ん!?」
「だから、東京にしとき!!」
即答だった。
「あんた、大阪は一回勤めたことあるやろ?ほなら次は東京やな!」
そんな言葉に背中を押され、自分の答えも即決だった。
「そやなー!ほな、俺東京にするわ!」
僕がそう答えた後、母が
「私も仕事頑張るし、大丈夫や!あんたも頑張りや!」
と言った。
やっぱりこの人、凄いなぁと思った。
いつも母には背中を押してもらってばかりだ。
弟の結婚式のときもそうだ。
弟の結婚式は大阪のホテルで行われた。
その時は親族そろって10人ぐらいで丸いテーブルを囲むように座っていた。
いろいろな余興もあり、自分は弟の写真を撮ったり、各テーブルへ挨拶に周ったりして、忙しかったがそれなりに楽しめていた。
やることが一段落し、親族みんなが座るテーブルに戻り、料理を食べようとしていた。
そのとき、
「おい!誠!!」と1人のおっちゃんが声をかけてきた。
その人は昔、自分が剣道を習っていた時、お世話になっていた先生で、
現在は弟の仕事先の上司だ。
「あ、先生お久しぶりです!」
「おい、お前、弟に聞いてるぞ!今何やってるんや??」
「あー今はバンドやってて…」
僕はそのころバンドに夢中になっていた。
「やりたいことをしたい!」との思いから、それまで取り組んでいた就活をスパッと辞め、バンド活動を始めていた。
おっちゃんは僕の隣に来るなりいきなり言う。
「お前、バンドなんてやっててどうすんねん!?あんまり親悲しますなよ!!」
「え!?」
いきなり、大きい声でそう言われた。
僕らのテーブルが一瞬静まり返った。
母やおばあちゃん、親せき、多分周りのみんなが聞いていた。
「お前な、ちゃんと就職して、親安心させたれよな!」
「いや、自分は今やりたいって思う事、やってるだけで…」
別に誰かを悲しませるためにバンドをやってるわけじゃなかった。
そのときは音楽が楽しいって思ったからバンドを始めた。
自分のやりたいように生きてみたいと思ったから始めた。
だって自分の人生だから。
「そんなんやったらあかんぞ!昔のお前はそんなんじゃなかった、もっと真っ直ぐで素直で…あの頃のお前はどこにいったんや!!」
そう言われた。
俺のやっていることが全て間違いだと言わんばかりに。
悔しかった。
でも、バンドで結果を出せているわけでもなかったし、そういわれても仕方ないと思った。
ただ、命は懸けていた。
毎日毎日、命を削って練習した。
少しずつでも上手くなってくのが嬉しかった。
むしろ、バンドを始めてからの方が、死を意識して毎日を生きていた。
生は永遠じゃない。
だから、今日を何のために生きるか。
音楽を始めた21歳の夏のあの日から今日まで、忘れたことはない。
俺に自分の人生を生きることを教えてくれたのは間違いなく音楽だ。
あの日から自分の人生が始まったと言っても過言じゃない。
今はもう、バンドは解散してしまったけれど、
本当に大切なものを俺に与えてくれた。
音楽が自分の生き方の根底を180度変えてくれた。
それは紛れもない事実だった。
「…ここにいますよ。」
涙がこぼれそうだった。
必死でこらえ、
おっちゃんの目を真っ直ぐに見つめ、そう答えた。
「え!?」
多分おっちゃんが全く予想していなかった答えだったのだろう。
かなりびっくりしていた。
「…やから、ここにいますよ。」
僕が再びそう言うと、おっちゃんは、
「……そうか…」
それだけ言い残し、僕らのテーブルから離れて行った。
結婚式が終わり、帰りは母と二人で帰っていた。
帰りの電車で母に、
「俺さ、これからも、やりたいように生きて行くけど、いいよな?」
とポツリと呟いた。
母は言った。
「あんたのやりたいようにやったらええよ。大丈夫や!」
そういってくれたこと、忘れてないよ。
本当に嬉しかったんだ。
いつもいつも背中を押してくれた。
そして、今回も。
ホントあなたの息子で俺は良かった。
だから、また、ここからもう一度、頑張ってみるよ。