波の行き先
彼女に振られてから、一ヵ月。
「ようやく、乗り越えられた。」
心からやっとそう言えるようになった。
少し前くらいから、この感覚は有ったのだが、
また、ぶり返す波がくるかなぁと思い、少し待っていた。
だが、その波もほとんど来ず、どこかへ去って行ってしまった。
「これはこれでしょうがなかったんだ。」
「自分の悪い所をしっかり直して、前を向いていこう。」
今はそんな気持ちが自分を突き動かしてくれている。
長く感じていた悲しかった日々も、今となっては、一瞬だった。
それでも、この日々を完全に忘れることはこの先ないだろう。
今まで生きてきた中で、一番悲しかったし、苦しかった。
「こんなに?失恋って、こんなにも辛いのか…」
初めての経験で戸惑いと悲しさがごちゃ混ぜになり、
何も考えられなかった。
後悔と失望から、自分を否定し続けた。
でも、今は狭かった視野は広がり、いろんな考えが膨らむ。
自分がやりたいこと、叶えたいことがまだまだある。
ここまで思えるようになった要因の一つは、
失恋を乗り越えるための考え方を模索し続けたこと。
ネットやYoutubeで失恋の乗り越え方と調べると、いっぱい出てきた。
色んな記事や動画を見ている中、これだと思う動画を見つけた。
そこでの考え方が、自分には凄く為になった。
中でも自分を大きく変えた考え方はこの二つだ。
①「相手に今まで与えて続けてしまっていた想いを取り戻すこと。」
人間ってどうしても振られた直後は相手との関係を取り戻そうとしてしまう。
僕もそうだ。
何度も彼女との関係を取り戻したいと願った。
しかし、それは間違いだ。
取り戻すものが間違っていた。
相手は僕が嫌だから、離れて行った。
そんな相手に、自分の過剰な想いを送り続けてしまうそれは極度の片思いとなり、
とんでもなく力を失っていく構図になってしまっていた。
想い=力だ。
想うことには力がいる。
力を使うところが違っていた。
これは本当に危険な状態だ。
見向きもされない相手に、自分の力を削っているだけなのだから。
彼女は確かに素敵な人だった。
だが、これから、彼女と共に歩んでいくことは、ない。
もう彼女が自分を幸せにしてくれることは無いし、
自分も彼女を幸せにすることは出来なくなった。
「その相手にまだ思い続けるのか?」
そう自分が自分に問い続けた。
最初はどうしても受け入れられなかった。
「自分には彼女しかいない。」
その思いが頑なに心を閉ざしていた。
でも、
その彼女はもういないということ。
彼女はもう自分にとって過去の人なんだということ。
この二つをしっかり受け入れることで、徐々に受け入れられるようになった。
「今まで自分の想いを受け取ってくれていた彼女はもういない。ならばその力を自分自身に使いたい。」
この気持ちが確立されたとき、
彼女への想いを断ち切ることができた。
②「悲しい気持ちから逃げず、素直に感じきること。」
別れた後に考えた末、
「自分のせいで、彼女と別れてしまったのだから、この悲しみは、しっかり感じていこう。」
そう思っていたことを思いだす。
この考えは間違っていなかったんだと確信した。
最初、この悲しみに耐えきれる自信は全くなかった。
何をしていても、悲しくなってしまうし、
何処にいても、彼女を思い出してしまっていた。
「はやく彼女のことを忘れてしまいたい。」
この悲しみに負けそうになり、そう思う日もあった。
でも、感じ切らず、この悲しみから逃げてしまえば、
次、また訪れた悲しみの波を乗り切れるはずない。
逃げても、いつか必ず巡ってくる。
人間はいつか死ぬ。
友達も、家族も。
必ず、また悲しみを乗り越えなければならない時が来るんだ。
逃げてばかりはいられない。
「だから…今!この悲しみをしっかり感じていかないと!!!」
そう思う事で、より一層悲しみの波が押し寄せた。
「耐えきれない…」
何度もそう思った。
無理に耐えきる必要はないとも思った。
だから、その時は何かにとことん集中した。
幸い、今の自分にはやりたいことが沢山あったので、助かった。
そうやって気持ちを落ち着けたその後、また悲しみと対決する。
こうやって悲しみを感じ続けて行った。
そして、一ヵ月経った今、しっかり悲しみを消すことが出来た。
これは感情をしっかり感じ切れたからだと思う。
そして、
「人の感情が動くときはどんなときか。」
このへんをしっかり理解していくことで、
より悲しみを受け入れられやすくなった。
自分が思っているよりも、ものすごく良いことが起きたり、
自分が思っているよりも、ものすごく悪いことが起きたときに、
人の感情は激しく動く。
失恋の悲しみは、
幸せな感情と辛い感情、この二つの感情にギャップが開くことによって生まれる。
悲しみに感情がより過ぎて、埋まらない空洞が出来てしまい、
そのポッカリ空いた大きな穴が失恋の悲しみだ。
その動きはあまりに大きすぎて、その空洞はすぐに埋めることは出来ない。
だからこそ、時間をかけて、悲しみを感じていき、
その穴を少しずつ埋めていく。
こうやってイメージすると、なんかめちゃわかりやすかった。
なにより悲しみがどうやって作り出されているかなど、考えたこともなかった。
勉強になりました。
考え方は人それぞれだろうけど、
自分は今はこの考え方が凄くしっくりきている。
なによりこの考え方で変わることができた。
振られたときを思い出して、思う。
「辛かったけど、まだ生きてるんだ。」と。
「やりたいこと、何でもできるんだ。」と。
…やっと、しっかり歩いていけそうだ。
もう一度、ここからだ。