Tsunamayo Blog

30歳から始めるド根性奮闘ブログ

決別の時

その日は雨が降っていた。

 

本日の職業訓練校での勉強を終え、帰りの電車へ傘を片手に小走りで向かう。

 

ここ最近毎日続く、雨の激しさに、そろそろ嫌気がさしていた。

 

雨は降っているが、涼しくはない。

ジメジメとした暑さが体にまとわりついてくる。

 

それを振り払いながら、電車に乗る。

 

電車の中では嫌な暑さは幾分マシで、

ちょっと一息。

 

考え事をしていると、すぐに乗り換えの駅に到着。

 

電車を降り、目的の電車の改札へ向かう。

雨漏りしていたのか、自分の頭に滴る水が直撃。

 

「…」

 

冷たさが頭に伝わるが、さっきから考えていることで頭がいっぱいだったのでさほど気にならなかった。

改札をくぐり、階段を下りて行き、駅のホームの椅子に座る。

 

 

今日一日考えていたことを反芻する。

 

 

考え事はもちろん、別れた彼女のことだ。

 

 

別れた当初に比べて、

彼女に対しての気持ちは徐々に薄れていることは実感していた。

 

しかし、スマホを見るたびに、

「もしかしたら、彼女から連絡が…」

なんてことを、まだ…まだ考えてしまっているのだ。

 

連絡が来ていないことを確認すると、すぐインスタグラムを開き、

過去の彼女との思い出に浸ってしまう…

 

まじで自分が気持ち悪いと思った。

 

何やってるんだといつも思っていた。

 

「いつまで繰り返してんだ俺…」

 

自分のふっ切れない弱さに腹が立つ。

 

どうしても、ラインを見るたびに、彼女の面影がちらついてしまう。

 

彼女から自分の執着心を離したい。

その気持ちはあるのだが、やはり、大好きだった人だ。

何かさらに大きなきっかけを自分で作っていくしか、離れることは出来ないのだろう。

 

「それでしか、次に進めない。」

 

椅子に座りながら、体に力を入れる。

 

俺が彼女のことを考えていようがいまいが、関係なく時間は進んでいく。

俺はそれでいいのか?

俺はどんな人生が歩みたかったんだ?

 

音楽を始めたときの気持ちを思い出す。

 

「一日一日を大事に生きていこう。」

 

そう思ったはずだ。

 

今、そういう気持ちを持って、しっかり生きれているのか?

否、生きれていない。

 

「立ち直った!」

 

と思ったら次の日、

 

「悲しい…」

 

と嘆く。

 

こんな気持ちがブレブレな自分が一日一日をしっかり生きれているだろうか。

そんなわけない。

 

「それなら、選択は一つしかないよな。」

 

そう自分に言い聞かす。

 

スマホを片手に、まずインスタグラムを開く。

 

彼女との思い出の写真がいっぱい詰まっていた。

 

一緒に行ったフェスの写真。

 

一緒に行ったカフェの写真。

 

一緒に食べた晩飯の写真。

 

いっぱいあった。

 

「こんなことになるなら、もっといっぱい何処かへ一緒に行っとけばよかったな…」

 

そんな気持ちが一瞬過るが、振り払うように顔を上げる。

 

 

「…今さら。今さらなんだ。ここで踏ん切りをつけようや俺。」

 

 

そう思い、インスタグラムのアカウントを削除した。

 

いっぱいの詰まった思い出。

それを消すことにためらいは有った。

 

「でも、彼女と一緒にもう生きて行くことはないんだ。」

 

その気持ちが自分の背中を押してくれた。

 

「後はラインか…」

 

ラインを開く。

 

彼女のラインが自分のライン一覧に表示されることで、

どことなく、まだつながっている気がしていた。

そんなことに気づいていながら、放置してしまっていた。

 

「このラインから、彼女を消すんだ…」

 

しかし、ここから彼女を消してしまうことは、彼女と一生会うことはなくなることを意味する。

 

「ダメだ…これだけは消したくない…」

 

そんな気持ちが強く表れる。

いつもの弱い自分だ。

いつものダサい自分。

 

そんなへタレな自分が、

今ここでどうするかで、

今後のすべてが変わる。

 

 

そんな分岐路に自分は今立っているんだ。

 

 

自分の中で葛藤する。

電車が何本も通り過ぎる。

自分の乗りたかった電車も行ってしまった。

時間が経つにつれ、「別に消さなくてもいいんじゃ…」なんて気持ちが自分の心に広がっていく。

動悸が激しさを増す。

 

 

…でも結論は何時間も前から、出ていた。

 

もう一人の自分が言う。

 

 

「…ダサい自分を変えたいって、誰が思った!?」

 

「今までの自分を変えたいって、誰が思った!?」

 

 

そう問いかける。

 

そんなの決まっている。

 

 

「…俺自身だ。」

 

 

 「…俺が決めたんだ!!!」

 

 

それなら、やることは一つしかないはずだ。

 

 

「…もう、彼女を想うのはここでおしまい。」

 

 

そう思い、彼女のラインをブロックし、削除した。

 

 

削除した後、少し動けなかった。

また待っていた電車が出発する。

それを横目に見ながら、脱力感が自分の体を支配する。

 

ただ座っていただけなのに、凄く疲れてしまった。

 

「これでよかったのかな…」

 

自分の中で後悔の念が押し寄せそうになる。

 

でも、もう後悔しても、彼女との連絡網は断ち切ってしまった。

 

後戻りは出来ない。

 

何処かで断ち切ることは必要だった。

それがたまたま今日になっただけ。

むしろ、もっと早く、決断するべきだったのかもしれない。

でも、彼女との楽しかったあの頃が、いつも邪魔をしていた。

 

「…その気持ちを今日は振り切ったんだ。」

 

変化した自分の気持ちに気づく。

 

「断ち切れたんだ。今日。今ここで。」

 

そんな自分を強く鼓舞する。

 

断ち切った自分がここにいる。

 

「それは俺自身が、変われた証拠じゃないか?」

 

そう思うと、自信が湧いてきた。

 

 

「今日は彼女との決別の日。」

 

 

そんな思いを胸に、待ち続けた電車に乗った。